多肉植物がうまく育たない。
水やりや日当たりを見直しても調子が出ない。
そんなときこそ見直したいのが「土」です。
見た目は同じに見えても、鉢の中で根が呼吸できるかどうかで生育は劇的に変わります。本記事では、初心者でも扱いやすい万能配合、市販土の補正術、品種別の最適レシピ、さらに季節・環境に応じた微調整方法まで、わかりやすくまとめました。
土づくりの基本戦略
- 排水性と通気性を最優先:水がスッと抜け、乾きやすいことが前提。根腐れは過湿と通気不足から起こります。
- 粒径は3~6mm中心:硬質で崩れにくい粒を選び、ふるいで微塵は除去。粉は通気を塞ぎます。
- pHは弱酸性~中性(6~7):極端な酸性・アルカリ性は避ける。
- 肥料分は控えめ:元肥は緩効性を少量。生育期のみ薄い液肥で十分。
使用する土のリスト
- 硬質赤玉(中粒3〜6mm):保水・保肥のベース。硬質が必須。崩れにくく通気構造が長持ち。
- 日向土(軽石):排水・通気・軽量化。比重が軽く、室内向け。ロットで粒形が異なるためふるい推奨。
- 鹿沼土:やや酸性、通気に優れる。夏の蒸れに強い。乾くと色が薄くなり水やり判断の指標にも。
- 桐生砂/川砂:比重と排水を補い鉢を安定。粒の角が取れたものは詰まりにくい。
- パーライト:多孔質で軽量化と排水UP。入れすぎると極端に乾きやすくなる。
- バーミキュライト:層状で保水・保肥を少量だけ足す。挿し木や乾燥しすぎる環境の微調整に。
- くん炭:弱アルカリでpH緩衝と通気改善。1〜2割まで。入れすぎは乾きすぎの原因に。
- ココチップ・ピート:保水材。多肉では少量に留め、腐敗・コバエのリスクに注意。
まずはこれ!万能配合レシピ(体積比)
- 硬質赤玉 4
- 日向土(軽石)3
- 鹿沼土 2
- くん炭またはパーライト 1

品種別おすすめ配合
乾燥地原産・さらに乾かしたい(エケベリア、グラプト、サボテン等)
- 日向土(軽石)5
- 硬質赤玉 3
- 桐生砂(または川砂・珪砂)2

やや保水したい(ハオルチア、ガステリア、葉物系)
- 硬質赤玉 5
- 鹿沼土 2
- 日向土 2
- バーミキュライト or 少量ピート/ココチップ 1

挿し木・実生向け(清潔・やや保水)
- 硬質赤玉 細粒 5
- バーミキュライト 3
- パーライト 2

コーデックス・リトープスなど(さらに粗く)
- 軽石大粒 6
- 桐生砂 2
- 硬質赤玉 2

季節・環境に応じた微調整
- 梅雨~夏(多湿期):軽石・砂を1~2割増やし粒を粗く。鉢底に大粒軽石を薄く敷いて排水を加速。
- 冬(低温・乾燥期):乾きすぎる環境では赤玉やバーミキュライトを少量増やし、粒径をわずかに細かく。
- 室内で乾きづらい:軽石や砂の比率を上げ、素焼き鉢+サーキュレーターで風通しを確保。
- 屋外で乾きすぎる:赤玉を増やし、半日陰や風除けで乾燥速度を緩和。
市販の多肉用培養土は使える?
結論、使えます。
ただしロット差や微塵が多い場合があるため、ふるいにかけて粉を落とし、軽石や川砂を1~2割ブレンドすると安定します。
「室内向け」「屋外向け」などの表示がある製品は、管理環境に合わせて選ぶと失敗が減ります。
植え替え・管理のプロテクニック
- 植え替え時期:春と秋の生育適期がベスト。真夏・真冬は避ける。
- 微塵は徹底的に除去:通気確保の最短ルート。ふるい(粗目・中目)を活用。
- 鉢底処理:ネット+大粒軽石で初速排水をアップ。
- 元肥は控えめ:緩効性をごく少量。根が動いてから薄い液肥を2~4週おきに。
- 水やり判断:表土が乾いてからさらに数日待ち、鉢が軽くなったら与える。温度が低い日は無理に与えない。
鉢選びも“土の一部”
- 素焼き鉢:通気性が高く乾きやすい。少し保水寄りの配合と好相性。
- プラ鉢:乾きにくい。軽石・砂を増やして排水を補強。
- 深鉢/浅鉢:直根型は深鉢、群生や浅根は浅鉢が管理しやすい。
水質・pH・ECの基礎

- 水道水の硬度:硬水は炭酸塩でpH上昇しやすい。軟水化フィルターや雨水が有効。
- pH簡易測定:土壌試験紙で6〜7をキープ。ずれる場合はくん炭(上がる)や鹿沼土(下がる)で微調整。
- EC管理:高ECは肥料塩類障害のサイン。たまにたっぷり潅水して塩抜き。
肥料設計
- 元肥:緩効性をごく少量。植え替え直後は無肥料でも可。
- 追肥:生育期に2〜4週間おき、薄めの液肥。色と節間を見ながら控えめに。
- 有機資材は少量のみ。分解で微塵化・カビの原因になる。
土の再利用・殺菌
- ふるいで微塵を除去し、痛んだ根を拾う。
- 乾土を黒ポットで天日消毒、もしくはオーブンや電子レンジで加熱殺菌(過加熱注意)。
- 比率の3〜5割を新材で更新し、構造を復元。
化粧砂の効果
土の表面に軽石などを敷くことです。
乾燥の均一化、藻・コケ防止、見た目の締まり。桐生砂や軽石細粒がおすすめ。厚さは5〜10mm程度。
よくある質問
Q. 赤玉は普通と硬質どちらが良い?
A. 硬質推奨。崩れにくく、1~2年通気を維持できます。
Q. くん炭は必須?
A. 必須ではありませんが、1割前後でpH安定と通気向上に寄与。入手性が悪ければパーライトで代用可能。
Q. 粒サイズはどれくらい?
A. 基本3~6mm。挿し木・実生は2~3mm、コーデックスは6~9mmが目安。
Q. 肥料はどのくらい与える?
A. 元肥はごく少量。生育期のみ規定の1000~2000倍の液肥を薄く、過肥は厳禁。
失敗しないチェックリスト
- 万能配合を基準に、環境で±1割の微調整
- ふるいで微塵を落とす
- 鉢底ネット+大粒軽石で排水強化
- 植え替えは春秋に
- 水やりは「完全に乾いてから」
まとめ
多肉植物の用土は「排水性・通気性・適度な保水」の最適化がすべて。
まずは硬質赤玉4:軽石3:鹿沼2:くん炭orパーライト1の万能配合から始め、品種と環境に合わせて粒度と比率を少しずつ調整しましょう。
市販土はふるい+軽石や砂のブレンドで安定化。季節ごとの配合見直しと適切な水やり・施肥を組み合わせれば、発色・姿・生育が安定し、根腐れや徒長のリスクを大きく減らせます。
今日仕立てた鉢から、理想のロゼットと締まった株づくりを始めてください。








